革のある暮らし|財布・小物・バッグの革工房|千葉市・四街道市

革でつくる、革とくらす

【理 kotowari®(ことわり)】開発ストーリー

薄さ7mmが魅せる革のテクノロジー

  1. 開発のきっかけ
  2. 必要最低限とゼロから
  3. コインケース
  4. カードケース
  5. コーナーストラップ(特許申請の要)
  6. 札入れと91°へのこだわり(特許申請の要)
  7. 失敗から生まれた「スライドロック構造」(特許申請の要)
  8. 全く無駄のないスマートウォレット

1. 開発のきっかけ

今年の1月、だいぶ流行りに乗り遅れましたが、私たちもカードのたくさん入るある程度薄い財布を制作しました。
そして、その財布を知人に見せたところ、「ファスナー以外全然面白くないね」とバッサリ。
私は、顔が紅潮していくのを感じました。
「じゃあ、面白い財布を作ってやりますよ!」
そして、そこから【kotowari™】の全てが始まったのです。

「キャッシュレス時代にふさわしい財布とは?」
その夜から改めて考えはじめ、どれくらい考えたでしょうか…

「キャッシュレス時代はほとんどのことがスマホでできる時代になる」
「薄くてコンパクトは当たり前」
この前提で、「増えすぎた機能性より、シンプルな使いやすさ」こそが財布に求められる時代が来るだろう、と。
そこから「必要最低限の機能でシンプルで使いやすい財布」の開発が始まりました。

2.必要最低限とゼロから

財布に最低限必要な構成要素は『札入れ・コインケース・カードケース』の3要素。
キャッシュレス時代はスマホがあれば大抵のことができるので、これら3つの要素さえも必要最低限の機能で良い、と考えました。
「必要最低限の構成要素にシンプルな使いやすいさを追求する」これを開発の課題としました。
また、前例を見てその概念に縛られることを避けるため、まったく他のコンパクト財布は顧みず、『0(ゼロ)』から自分の思考だけでデザインすることに取り掛かりました。

3.ファスナーポケット

【kotowari™】の開発でまず考えたのはファスナーポケット(コインケース)。
知人が唯一認めていた(?)ファスナーポケットは使いやすさを考え、当初どおり財布外側に配置し、ファスナー長を最大限に取れる45°に傾けました。
また、縫い代なども考慮し、ファスナー長は90mmとして設計。
はじめに80mmでサンプルをつくったのですが、ポケットに指が入れづらかったため、90mmにしたところ、だいぶ使い勝手がよくなりました。
そして「コンパクトで使いやすさを求めるには90mmが最適」としました。

また、あえてファスナーポケットの左上部にはコインが入らないデザインになっています。この理由は後に説明する「コーナーストラップ」と関係しています。

4.カードケース

大きく開くカードケース

コインケースの設計上、財布本体は革を2枚重ねた構造になったので、「革と革の間にカードケースを入れてしまえば邪魔にならない」と考えました。
カード収納口をクレジットカードより5mm大きく設計することで、必要最低限と考えるカード3枚(キャッシュカード・クレジットカード・Suicaなど)程度を十分収納でき、財布上下を軽く押すと収納口が大きく開くためカードが取り出しやすくなっています。
ただ、この時点で問題だったのが「どうやってカードが落ちないように収納口のフタをするか?」でした。

5.コーナーストラップ(特許申請のポイント)

そこで考えたのが『コーナーストラップ』
財布上部左角に一本のストラップを財布外周から財布を包み込むように取り付け、カードケースの収納口をふさぐようにすると、財布フラップも固定することができ、さらに紙幣上辺の飛び出しを防ぐこともできました。
たった一本のストラップが3つの役割を果たすという画期的な発想だったのです!
ここで、私はコーナーストラップにもうひと工夫を施しました。
コーナーストラップを固定するホックの位置を、幾何学計算値より7mmほど下に配置したのです。
そうすることで、コーナーストラップの内側がやや持ち上がる意図的なネジレが生じるので、財布フラップをコーナーストラップに通しやすくなります。
また、3項で説明したようにコインケースの左上部にコインが入らない構造にしたのは、財布フラップがコーナーストラップに入りやすくするためだったのです。

6.札入れと91°へのこだわり(特許申請のポイント)

札入れ部のデザイン試作品

最後に残った札入れのデザイン。
これには本当に苦悩しました。
数日間悩み、試作も幾度となく繰り返しました。
通常の札入れ構造だと面白みがなく、また薄さを追求することができない…
そこで、私が考えたのが大きさの異なる2つの円弧を利用する方法。
円弧はその形状のバランスの良さで物理的な衝撃に強く、見た目にも美しい。
半径の異なる大小の円弧を財布左右に配置し、財布を折った際、重ならないようにしました。
革が重ならないことで、財布の薄さを実現したのです。
また、円弧の中を円弧でくり抜くことで、紙幣の厚みも吸収できるように工夫しました。
さらに、設計上の精密さを追求するため、円弧の大きさは日本の紙幣サイズに最適化しています。

『91°へのこだわり』

90°の円弧をただ財布に縫い込むだけだと「財布本体と札入れの間に隙間がなく、非常に紙幣が入れにくい」という問題がありました。
そこで、円弧に90°以上の角度を付けることを思いつきました。
始め、95°で試したのですが、円弧の湾曲(たわみ)がとんでもないことになり、即却下。
次に92°で試作をしましたが、これでもたわみが大きく実用性がありませんでした。

「これでダメなら…」との思いで91°で試作。
まさにこれでした!
円弧に程良いたわみができ、紙幣が入れやすくなり見た目も美しくなったのです。
たったプラス1°にこれほどまで苦労するとは思ってもみませんでしたが、このプラス1°が財布の使いやすさと美しさを大きく左右する要素だったのです。

7.失敗から生まれた「スライドロック構造」(特許申請のポイント)

札入れ左が大きい円弧だった試作

プラス1°の問題が解決し、全体の構造が見えたと思いきや、さらなる問題が発生。
この時点では、左に大きい円弧、右に小さい円弧を配置していました。理由はコーナーストラップに財布フラップを通しやすくするため。
しかし、この構造で財布の開閉試験をしてみると、紙幣の右側が「ピョン」と飛び出してくることが多々あったのです。
おそらく円弧の大きさの違いによる「革と紙幣の摩擦バランスの悪さ」に起因したものでしょう。

紙幣右側の飛び出し問題を解決するためには、円弧の配置を逆にして、左を小さい円弧、右を大きい円弧にしなければなりません。
札入れ左が小さい円弧になることで札入れ左の摩擦が小さくなり「紙幣左側の飛び出し」が予想されましたが、左側にはコーナーストラップがあり、それを防ぐと予測できたからです。
ただ、気がかりだったのは、財布フラップをコーナーストラップに入れたときの、札入れの段差による財布フラップの「ひっかかり」でした。
「ひっかかり」が原因で財布フラップがコーナーストラップから出しにくいとなると構造上の大きな欠陥となります。
それでも「やってみなければ…」と思い、ダメ元で試作。
しかし、これが最高の結果を生み出しました!

思っていたとおり、紙幣左側の飛び出しはコーナーストラップでガードされましたが、財布フラップはコーナーストラップの締め付けと札入れの段差でひっかかり、ロックされた状態になりました。
「やっぱり、ひっかかるか…」と落胆しかけ、財布プラップを開けようとすると、このロックは全く邪魔になることもなく、自然に解除されたのです!
財布フラップを開ける自然な動作が、札入れ段差によるひっかかりを回避する絶妙な角度を生み出すのでしょう。何度となく試験しましたが、ひっかかりが気になることはありませんでした。
財布が閉じた状態のときは財布フラップの横滑り(スライド)をロックし、さらに財布を開く際には全く邪魔にならない夢のような構造…
まさに「失敗は成功の母」だったのです!
私たちはこの構造を『スライドロック構造』と呼ぶことにしました。

スライドロック構造設計イメージ

8.全く無駄のないスマートウォレット

多くの計算と試作により、私はようやくひとつのコンパクト財布を作り上げました。
「コインケースとカードケースの関係から財布の最適なサイズが導かれ、財布のサイズが決まることで札入れの円弧の大きさが決定し、円弧の大きさが決まることでスライドロックが十分に機能するようコーナーストラップの位置を決める」
これら一連の相関関係により【kotowari™】は、全くと言っていいほど無駄のない、シンプルで使いやすいデザインとなりました。このシンプルで無駄のないデザインに、私の知恵と革職人としての情熱の全てが注ぎ込まれています。

『知るほどに世界はシンプル』

【kotowari™】を作り上げてわかったことは、この財布の構造のポイントが全て幾何学に基づいていた、ということです。
わかってしまえば、そこにはシンプルな世界が広がっていました。
世の中は「知らないから怖い」「わからないからできない」ことでいっぱいです。
でも、一つひとつできることから丁寧にひも解いていけば、結構シンプルだったりします。
【kotowari™】も完成するまではとても大変でしたが、完成品は至ってシンプルです。
モノゴトを理解するためには、たいてい困難がつきまといますが、【kotowari™】の設計のようにその先にはシンプルな世界が広がっているのではないか、と思うのです。

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